「恋文」

貴方を愛そうと思う。

だからまず、僕達が身にまとっているこの邪魔なものを脱いでしまおう。
それにはただ服を脱げばいいというわけじゃない。
ただ服を脱いだところで、僕達はちっとも裸にはなりきらないのだからね。

僕は君を愛したいんだ。

お互い、本当にすっかりと裸になろうじゃないか。
つまり、この自分という退屈な執着を脱ぎ捨てるんだ。
僕も、君も、自分が誰でどんな人間なのか、
美しいとか、醜いとか、何が好みで、何が嫌いだとか、
はたまた、どんな仕事をしていて、どのような人生についての悩みを持っているとか、
はては、どんな人が好みで、どんな人とならうまくやっていけるのかだとか、
これまで何をしてきて、何をしてこなかったのか、
これから何がしたくて、何がしたくないのか、
そういったもの、
そういった君のパーソナリティー(個別性)と呼ばれているものは、全部どうでもいいんだ。

僕は愛したいのであって、それは君と仲良く手を繋いで公園を歩くことではないんだ。

だから文字通り、実際にこの忌々しい自分の皮膚を剥ぎ取ってしまおう。
そうすれば自ずと僕達はこの人生という茶番劇から自由になれるだろう。

そして、僕達の正体が、ただの「愛欲に震える肉」にすぎなかったことを知るんだ。

全部これだけが問題だったんだ。
僕達がこれまでその表層に見ていたものは、全てはそのバリエーションにすぎなかったんだ。

今こそ僕達は、僕達の存在そのものであったこの念願に忠実になれる。
皮膚を剥ぎ、全身の神経が剥き出しになった僕達にとって、愛の行為は大変な苦痛が伴うだろう。
だが、その先に、
僕達の存在を打ち消し合い、互いを殺し合いながら、
その苦痛を乗り越え、もはやその苦痛がどちらの感覚なのかも判別できなくなったその先に、

僕達は互いの存在が倒れ込むあの合一の地点を垣間見るんだ。